大判例

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米沢簡易裁判所 事件番号不詳 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、罪となるべき事実

被告人神尾繁蔵、同金子伊勢松、同片倉静雄、同奥田仁市は昭和四二年一月二二日施行の東置賜郡川西町町長選挙に際し、斉藤義一が立候補する決意を有することを知り、被告人等は共謀の上、右斉藤に当選を得しめる目的をもつて、右斉藤義一の承認を得ずして同人名義の年賀挨拶文記載のはがきを、同選挙区の選挙人に郵送することを企て、未だ右斎藤候補の立候補届出のない昭和四一年一二月二八日ころ、別紙年賀はがき郵送先記載の右選挙人である同郡同町大字西大塚一、七八五番地高橋通三郎等八八名に対し右斉藤義一名義の年賀挨拶文記載のはがき各一枚ずつ合計八八枚を郵送し、もつて立候補届出前の選挙運動をなしたものである。<中略>

四、弁護人の刑訴法第三三五条第二項の主張に対する判断

弁護人は本件年賀はがきは、「明けまして御めでとう御座います。御家内御一同の御健康と御多幸を御祈り申し上げます」の文面よりしても純粋な年賀拶挨状であり、直接たると間接たるとを問わず選挙のことには一切触れていない。斉藤が立候補したあかつきにおいて当選を得しめようとする意思の表示は認め得ない単なる儀礼的文書の配布であるから選挙運動にならないとし、昭和一一年六月一五日大審院判決(十五巻七九三頁)を援用し無罪を主張する。

よつて考えるに、候補者自ら、或は候補者の意思に基いてなされる年賀状の発送行為が通常の時期に通常な方法により、通常の内容をもつものである場合は、社交上の儀礼と目され選挙運動に該当しないけれども、年賀状が通常内容をもつものにすぎないからといつてそのすべてが、社交上の儀礼であり選挙運動にならないものとして放任されるものではないと考える。このような年賀状が社交上の儀礼と目されるのは、候補者が自ら、或は候補者の意思に基いて、通常の時期になされる場合であつて、本人の意思に基かないで、選挙時期に接近してから、本人以外の者が立候補を決意した候補者が其の届出をなす前に、同人が立候補のあかつきに投票を得させるため、直接又は間接に利用する意図の下に候補者名義の年賀状を、候補者と交友関係もなく平素ならば郵送すべき者達でないところの多数の選挙区の選挙人に発送することは外形上通常の内容をもち選挙に関する間接又は直接の言詞が記載されていないとしても、これは社交的儀礼でなされたものとはいえず選挙運動のためになされたものと認むべきであり公職選挙法第一二九条に違反するものというべきである。

本件記録中、候補者斉藤義一の司法警察員に対する供述調書(記録第九一丁以下)によれば、

「私自身年賀状は約六〇〇枚位、私自身が書いて出している」

「私が出した年賀状以外の私名義の年賀状については、誰からも相談はうけなかつたし、又私が指示した憶えもありませんので、神尾や金子達が勝手に出したものです」

「前に一言相談をうければ、このような事はさせなかつたと今残念に思つております」

との趣旨の各供述記載

被告人奥田仁市の検察官事務取扱検察事務官に対する昭和四二年三月二七日付供述調書(記録第五八四丁以下)中

「斉藤候補は助役を二期勤めた人でありながら選挙民に相られていないことが感じられたので、同人が立候補した場合、同人に当選をさせるために、主として浮動票層に対して年賀状により斉藤を認識させて投票のときには、これらの層の票を斉藤に投じて貰うことに、かなりの期待が持てるものと考えたので、このことを斉藤に打開けたところ、断わられてしまつた。しかしながら自分はこのようにすることが斉藤のためになるものと考え、やり抜く考えをした」

「そしてこの旨を神尾、金子、片倉らに話し、相談の上斉藤名義の年賀状を郵送した」

趣旨の各供述記載

被告人神尾繁蔵の検察官事務取扱検察事務官に対する昭和四二年三月三〇日付供述調書八項(記録第五〇一丁)

「私共三人は奥田君の主張により斉藤名義の年賀はがきを出すことに決めた。斉藤さんの当選をさせたいばかりに、その票を幾分か集めることが出来そうな期待で出したのが、私達の考えでした」

趣旨の供述記載

被告人金子伊勢松の同検察事務官に対する供述調書(同年三月二九日付記録第五六六丁以下)

被告人片倉静雄の同検察事務官に対する供述調書(同年三月二五日付記録第六二七丁以下)

中各前記神尾被告人と同趣旨の供述記載

並に証拠標目記載の証拠を綜合すると、本件年賀はがきは、単なる社交上の儀礼として郵送されたものではなく、斉藤義一が立候補のあかつき、同人に当選を得しめる目的をもつてなされた立候補届出前の選挙運動と認められ公職選挙法第一二九条に該当するから、弁護人の主張は採用しない。(大島秀之助)

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